旅の終わり
小学生の夏休み
母の生家に行くと
90半ばの
ひいばあちゃんがいた。
トロリトロリと
うたたねをしながら
可愛くすわっていた。
「津波はこえぇんだ。
(怖いんだよ)」
母は小さい頃から繰り返し
聞かされていたそうだ。
今、この地に立つ
私のような人間が
鎮魂を軽々しく
口にするべきではないかもしれない
最後まで
「避難してください」と
必死にアナウンスを続け
亡くなった若き職員さんのことを
思う
彼女の声で
今、生き続けている人もいる
立ち尽くし
ただ、手を合わせる
10年
人の記憶は
不思議なものだ
ボケないうちに
子供たちに伝えておかなくては
立ち寄った地で見かけた
地元の一団
土地の言葉だ
電話で聞いた
叔父や叔母の言葉そのまま
同窓会の集まりらしい
畑の出来や
足腰の話題で盛り上がっていた
登米
なんと美しい街だろう
初めてなのに懐かしい
いよいよ
旅の終わり
瑞巌寺
手入れの行き届いた境内に
身が引き締まる
瑞巌寺山内 円通院
凛として 静か
少しだけ色づき始めていた
東北の秋は近い
旅を終え
日常に戻ったら
しっかりやろう
改めて思う